月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】谷口工業㈱

2015年1月30日更新

1.会社概要、倒産経緯

・1960年創業の土木・建築工事業者。地元官公庁発注の道路整備工事や公営団地建築工事のほか、民間の商業施設建築工事、一般住宅建築などにより、事業拡大を進めてきた。
・2011/12期に公共工事受注の激減により、売上は前年比41%減となり、その後も厳しい受注環境が続いていた。
・かかる中、建築資材など工事原価の高騰から資金繰りは益々悪化し、倒産に至った。
・黒字倒産の背景としては、グループ間取引による不適切な会計処理の可能性が疑われている。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
運転資金
回転期間
(ヵ月)
実質自己
資本比率
(%)
2013/12 1,060.0 - - 4.1 - - - - -
2012/12 728.7 20.1 15.1 7.5 45.1 10.2 1,734.2 25.1 ▲116.7
2011/12 748.5 11.3 1.0 0.1 41.3 9.8 1,876.5 24.3 ▲69.7
2010/12 1,270.6 15.7 9.3 5.7 48.7 5.0 1,589.0 13.9 ▲89.6
2009/12 1,063.7 11.3 34.9 17.6 46.9 4.5 1,639.0 3.7 ▲21.5
2008/12 1,330.7 29.9 24.8 10.8 55.0 2.9 1,364.7 3.4 ▲5.2
2007/12 1,647.6 40.6 31.4 0.5 54.6 2.4 1,357.0 3.5 0.0
2006/12 1,508.2 47.1 47.1 26.4 58.1 0.9 1,274.1 6.9 32.0
2005/12 2,799.7 190.5 209.6 52.2 48.0 1.6 1,487.0 3.0 17.4
2004/12 1,765.2 54.0 60.9 31.4 35.0 1.3 1,889.3 6.6 ▲6.4

コメント

・最近10年間では、売上高は、2005/12期には約28億円を計上していたが、直近2013/12期の約10億円まで落ち込んでいた。特に、2011/12期、2012/12期は公共工事の受注減によって、売上高は7億円台まで低下し、厳しい状態にあった。
・しかしながら、利益面では、常に黒字を維持しており、その蓄積によって表見上の自己資本比率は、40~50%と高い水準を維持し得ていた。
・一方で、2010/12期にグループ会社から多額(約12億円)の販売用不動産を仕入れたことで、棚卸資産回転期間は、24ヵ月を上回る異常値となっていた。

3.データの分析

・本ケースを分析する財務指標として「棚卸資産回転期間」と「実質自己資本比率」に注目した。
・上記決算のデータのとおり、当社は極めて厳しい受注環境において安定した黒字計上を果たすことで、自己資本を蓄積し、高い
自己資本比率を維持していた。しかし一方で、大幅減収となった2011/12期に、同時に棚卸資産(販売用不動産)が大幅に増加しており、当該棚卸資産の資産性が乏しいものだったと考えれば、実際は大幅な赤字であった可能性も考えられる。
・2010/12期には、当該販売用不動産と同等の長期貸付金が確認されており、同不動産の取得と共に貸付金が解消されていることを考慮すれば、長期貸付金の対価としてグループ会社から当該不動産を取得したことが推測され、その価値は取得時点で取得価格を大幅に下回る状態であり、多額の含み損の温床であったことが想定される。含み損は、表面上の自己資本を上回る金額であったと考えられ、当社は実質的には、数年前から債務超過の状態が続いていたものと考えられる。
・下表は、総合工事業の「棚卸資産回転期間」及び「実質自己資本」の倒産倍率を集計したものである。この結果からも、当該指標が倒産分析に有効であるといえよう。

○総合工事業における棚卸資産回転期間(集計期間:2013/4~2014/3)・・・2012/12期 25.1ヵ月
棚卸資産回転期間全体1ヵ月未満1ヵ月~3ヵ月3ヵ月~5ヵ月5ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 0.98倍 0.84倍 1.25倍 2.70倍
○総合工事業における実質自己資本比率(集計期間:2013/4~2014/3) ・・・ 2012/12期 債務超過
実質自己
資本比率
全体債務超過0~10%10~30%30%以上
倒産倍率 1.00倍 1.59倍 0.94倍 0.70倍 0.75倍

4.総評

・本件は、表面的には、苦しいながらに売上高を築き上げ、黒字を確保しながら、健全な財務体質を整えてきた企業と考えられやすい。しかし、上記4.データ分析のとおり、棚卸回転期間の大幅な増加から、当該年度に特殊な取引や会計処理が行われて、実態は債務超過状態にあったことが想定される。今回のケースでは、特殊な事象に対して、当該資産の取得目的、取得資金の調達方法などについて、分析の深掘りを行うことで、企業の実態を探ることが可能であった。
・財務分析においては、表面上の収支推移にとらわれることなく、財政状態と収支状況の両面から分析することが、企業の実態を把握する上で重要といえる。

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