月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】㈱白元

2014年6月27日更新

1.会社概要、倒産経緯

1923年創業の防虫剤製造業者。創業家の鎌田一族三代に渡る経営により、ミセスロイド・アイスノン・ホッカイロなど幅広いジャンルでヒット製品を次々と生み出し、業容を拡大してきた。しかし、その一方で、2006年頃から不透明な会計処理の疑いが生じ、代表者の交友関係の派手さや、任期途中での監査法人の辞任なども相俟って、金融機関から懸念視されていた。2014年1月にホッカイロ事業を興和㈱に譲渡した際に、譲渡代金の一部を前借りしたことで資金繰りの苦しさが浮き彫りとなり、再び粉飾疑惑が浮上。杜撰な経理処理から再生機構の支援も得られず、金融機関へ借入返済猶予などを要請するものの、再建案の同意を得られなかったことから今回の措置に至った。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
売掛債権
回転期間
(ヵ月)
現預金
回転期間
(ヵ月)
2014/3 22,314.0 ▲8,135.5 ▲8,564.5 ▲6,226.3 ▲7.9 - 23,629.5 - -
2013/3 30,486.7 835.7 269.7 ▲369.7 14.9 6.4 29,824.5 4.9 0.2
2012/3 31,526.6 1588.1 602.2 510.1 16.8 5.8 29,699.5 3.8 0.6
2011/3 29,456.0 - - 101.0 21.3 - 24,070.0 - -
2010/3 33,237.0 - - 110.0 22.4 - 22,823.0 - -
2009/3 30,114.0 - - 481.0 20.9 - 24,395.0 - -
2008/3 28,812.0 - - 291.0 16.3 - 20,275.0 - -
2007/3 25,767.0 - - 399.0 20.2 - 21,594.0 - -
2006/3 17,204.0 - - ▲6,853.0 - - - - -
2005/3 24,214.0 - - ▲1,780.0 - - - - -

コメント

・2012/3期以降の業績の落ち込みが激しく、粉飾修正済の2014/3期決算では大幅赤字を計上し、債務超過状態であることが判明した。
・また、2006/3期決算において、粉飾修正と見られる過年度修正損により、約70億円の赤字を計上しているが、今回の粉飾を考慮すれば、2006/3期以降も決算粉飾が常態的に行われていた可能性が懸念される。

3.データの分析

・本ケースを分析する財務指標として、「売掛債権回転期間」および「現預金回転期間」に注目した。売掛債権勘定の水増しは、粉飾に利用されやすく、本ケースにおいても懸念項目として挙げられる。
・2013/3期において、売掛債権が約125億円計上されており、売掛債権回転期間が約5ヵ月に及んでいる。業界平均の2.8ヵ月から鑑みた売掛債権の適正額を約70億円とすれば、約55億円の債権について架空計上の可能性がある。その場合、営業利益段階からの赤字及び債務超過の可能性が高い。
・現預金回転期間は2012/3期で0.6ヵ月と低調な水準であったが、2013/3期には、0.2ヵ月とさらに低い水準となった。実質的な赤字を補填するための資金として、現預金が減少したものと考えられる。

○売掛債権回転期間(集計期間:2013/4~2014/3)・・・2013/3期 4.9ヵ月
売掛債権回転期間全体1ヵ月未満1~2ヵ月2~3ヵ月3~4ヵ月4~5ヵ月5ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 0.98倍 0.81倍 0.90倍 1.11倍 1.54倍 2.70倍
○現預金回転期間(集計期間:2013/4~2014/3) ・・・ 2013/3期 0.2ヵ月
現預金回転期間全体0ヵ月未満0~0.4ヵ月0.4~0.8ヵ月0.8~1.5ヵ月1.5~3ヵ月3ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 5.67倍 1.43倍 1.11倍 0.89倍 0.72倍 0.89倍

4.総評

・本ケースは、金融機関からの与信を維持するために粉飾を行い、倒産に至ったケースである。
・斯業界は、化学製品における世界的な需要減少に伴い統廃合が進むなど、厳しい業況環境が続いている。加えて、競合の参入など当社を取り巻く環境も厳しさを増し、粉飾によらなければ利益を捻出できないほど追い込まれた状況であったと推測される。
・本ケースの倒産を予見するに当たっては、粉飾修正後の2014/3期ではなく、2013/3期決算から倒産の兆候を読み取る必要がある。そのためには、粉飾を見抜くポイントである「回転期間」「粗利益率」「平均借入利率」を業界平均値や過年度数値と比較・分析することが有効である。本ケースにおいては、「売掛債権回転期間」を中心に粉飾の特徴が表れており、業界平均値と比較することで売掛債権が過大であることが判明し、実質的な赤字を補填するための資金として現預金が減少し、「現預金回転期間」が極めて低い水準となっていることが読み取れる。
・粉飾の可能性から適正額を推測し、脆弱な財務実態であることを読み取ることで、倒産の危険性を把握できた例といえよう。

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