月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】 (株)美術出版社

2015年3月27日更新

1.会社概要、倒産経緯

1905年に創業し、業歴100年以上を誇る美術専門の老舗出版社。「美術手帖」をはじめ、多数の美術書を手がけ、年間30~40点を発刊していた。また、アプリやウェブサイト向けコンテンツの配信、ポスター制作、美術検定試験の主催など事業の多角化を行い、ピーク時の2009/3期には売上高17億円超を計上した。しかしながら、出版業界の縮小に伴い業績が悪化、多額の負債も資金繰りを圧迫していた。負債の削減による経営のスリム化を目的として今回の措置に至った。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
買掛債務
回転期間
(ヵ月)
棚卸資産
回転期間
(百万円)
2014/3 1,208.4 45.6 22.9 4.4 8.5 13.0 2,145.5 4.2 4.6
2013/3 1,134.5 48.4 39.9 33.1 8.8 12.5 2,052.4 4.3 4.7
2012/3 1,156.0 23.3 7.5 ▲38.7 8.6 9.7 1,747.8 2.4 3.9
2011/3 1,135.1 29.7 10.8 2.6 11.7 9.1 1,634.7 2.1 3.7
2010/3 1,374.0 - - 1.3 - - - - -
2009/3 1,744.0 - - 10.3 - - - - -
2008/3 1,620.8 - - 1.0 - - - - -
2007/3 1,547.7 - - 10.7 - - - - -
2006/3 1,545.4 - - 14.3 - - - - -
2005/3 1,638.4 - - 25.1 - - - - -

コメント

・売上は、2009/3期をピークに減少傾向で推移しており、業界環境の悪化が窺える。
・多額の負債を有し、直近の決算においては借入金が年商以上の規模となっている。また、自己資本比率は10%を下回る水準であり、財務の脆弱性が見受けられる。
・2013/3期以降、買掛債務回転期間が急増しており、支払猶予による回転期間の長期化が懸念される。

3.データの分析

・本ケースを分析する財務指標として、「買掛債務回転期間」と「棚卸資産回転期間」に注目した。
・出版業界においては、一般的に回収サイトが支払サイトより長く、運転資金需要が生じる点や、近年の書籍返品率が4割を超えるため、過剰返品が資金繰りを圧迫するおそれがある点に注意を要する。
・当社の取引条件も、2012/3期までは回収サイト(約3ヵ月)が支払サイト(約2ヵ月)を上回っており、運転資金需要が生じていたものと考えられるが、借入過多状態であったことから、金融機関からの追加融資が得られず、取引先に対する支払延期によって繰り回した結果、2013/3期に買掛債務回転期間が急激に長期化したことが推測される。
・棚卸資産回転期間は4ヵ月を超え、業界平均に比して3ヵ月以上、大手出版社と比して2ヵ月以上長期である。在庫が過大な状態であり、販売不振による過剰返品から不良在庫が蓄積された可能性が窺える。
・下表は、専門サービス業の「買掛債務回転期間」及び「棚卸資産回転期間」の倒産倍率を集計したものである。この結果からも、当該指標が倒産分析に有効であるといえよう。

○買掛債務回転期間(集計期間:2013/4~2014/3)・・・2014/3期 4.2ヵ月
買掛債務回転期間全体2ヵ月未満2ヵ月~4ヵ月4ヵ月~6ヵ月6ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 0.91倍 1.72倍 1.80倍 4.00倍
○棚卸資産回転期間(集計期間:2013/4~2014/3) ・・・ 2014/3期 4.6ヵ月
棚卸資産回転期間全体1ヵ月未満1ヵ月~3ヵ月3ヵ月~5ヵ月5ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 0.95倍 1.50倍 2.17倍 4.62倍

4.総評

・書籍販売数の減少が続く中、雑誌広告の激減や販売書籍の高い返品率も相俟って出版業界の収益構造は悪化している。美術書というニッチ市場では、限定的な発行部数によって制作コストが回収し難いなど、当社は厳しい環境に置かれていた。
・主力商品である雑誌は、販売から現金化までに4ヵ月を要する。支払いに比べ回収が1~2ヵ月間長期化することで運転資金が必要となり、さらに、回収は返品分を差し引いた金額となることから、資金繰りに窮していたと考えられる。そのため、運転資金を借入で補い続け、有利子負債が年商規模まで拡大したと推測される。
・業界縮小により本業が悪化、新事業も軌道に乗らず、多額の借入負担から資金繰りに窮し、破綻に至ったケースといえる。

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