月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】㈱エムズハウジング

2015年6月26日更新

1.会社概要、倒産経緯

・1990年3月創業の木造建築工事業者。主に個人向けに建築工事とリフォーム工事を行い、宅地分譲も手掛けていた。
・戸建て住宅の着工件数は減少基調で推移するなど厳しい業界環境にあり、当社においても厳しい収益環境が続いていた。
・2014/1期は、消費増税前の駆け込み需要により、大幅な増収で推移したが、翌2015/1期にはその反動で売上・利益ともに大幅に落ち込み、赤字に転落した。
・従来より運転資金による資金需要が高く、金融調達に依存する脆弱な財政状態が続いていた中で、赤字に対する資金補填が困難となり、資金繰りが破綻した。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
現預金
回転期間
(ヵ月)
借入
依存度
(百万円)
2015/1 437.0 - - ▲21.9 - - - - -
2014/1 1,099.6 37.7 37.6 2.9 2.6 3.1 370.5 0.2 75.8
2013/1 701.9 10.1 2.4 1.7 1.2 6.8 537.4 0.3 74.0
2012/1 603.9 5.6 1.8 1.1 1.1 7.8 461.6 0.7 84.5
2011/1 385.2 5.4 0.3 0.2 1.1 8.3 362.1 0.8 72.7
2010/1 332.0 7.4 1.7 0.2 1.1 10.1 340.5 2.5 82.3
2009/1 407.4 4.0 0.3 0.1 1.2 7.1 277.2 0.6 87.0
2008/1 394.3 3.4 0.5 0.3 1.3 5.4 247.1 0.6 72.0
2007/1 454.1 0.6 0.7 1.7 1.8 3.0 173.1 0.6 65.8
2006/1 408.2 1.3 1.3 0.9 0.7 2.6 198.5 0.4 44.2

コメント

・2012/1期~2014/1期は増収基調で推移したが、多額の借入に伴う支払利息や特別損失の計上が利益を圧迫し、僅少な黒字が続いていた。2015/1期の大幅減収により多額の赤字が発生し、債務超過に転落した。
・低収益であることに加え、工事における運転資金の負担が大きかったことから、資金調達は借入に依存せざるを得ず、借入依存度は高い水準で推移していた。

3.データの分析

・本ケースを分析する財務指標として、「現預金回転期間」および「借入依存度」に注目した。
・現預金について、2014/1期における現預金回転期間0.2ヵ月は、業界平均2.1ヵ月に比し大幅に低い水準であった。
・近年の当社において、「未成工事支出金を始めとする棚卸資産」に比し「未成工事受入金」の方が少額計上となっている状態が続いていたことを考慮すると、工事における資金負担が大きく、利益や現預金の水準から鑑みると、事業継続には運転資金の確保が必須の状態であったと考えられる。
・正味運転資本と借入金が概ね同水準であることから、運転資金の調達の殆どが借入金で賄われていたものと考えられ、これが高い借入依存度の背景であったと思料される。
・下表は「現預金回転期間」及び「借入依存度」の倒産倍率を集計したものである。この結果からも、当該指標が倒産分析に有効であるといえよう。

○総合工事業の現預金回転期間(集計期間:2014/4~2015/3)・・・2014/1期 0.2カ月
現預金回転期間全体0.4ヵ月未満0.4ヵ月~1ヵ月1ヵ月~2ヵ月2ヵ月以上
倒産倍率 1.00倍 1.64倍 1.09倍 0.74倍 0.86倍
○総合工事業の借入依存度(集計期間:2014/4~2015/3)・・・2014/1期 75.8%
借入依存度全体20%未満20%~60%60%~100%100%以上
倒産倍率 1.00倍 0.68倍 0.78倍 1.34倍 1.93倍

4.総評

・本件は、事業における運転資金負担が大きい中で、業績の悪化によって資金確保が困難となり倒産したケースである。
・建設業においては、前受金の受領によって工事資金を確保することが少なくないが、建売住宅の建築等においては、工事代金の立替が必要となるため、多額の資金負担が発生し得る。
・既述のとおり、当社では工事における資金負担の発生により、金融調達への依存が高い状態が続いていたことから、金融機関からの与信余力は乏しい状態にあったものと考えられる。かかる中、消費増税の影響から多額の赤字を計上し、更なる資金需要が発生したが、金融支援の確保が困難となったために、倒産に至ったものと思料される。
・本件のように、運転資金の調達を借入に依存している企業においては、業績の悪化や財政状態の悪化によって、金融機関からの与信が得られなくなり、資金支援が途絶えて資金繰りが破綻することが想定されるため、現預金の水準や借入への依存度を注意することが倒産を予見する上では重要といえよう。

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