月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】太洋産業(株)

2018年8月31日更新

1.会社概要、倒産経緯

・1944年設立の水産加工卸売業者。「タイサン」のブランド名で知られ、秋刀魚や鮭などの水産加工品を取扱っていた。
・ピークとなる1982/12期には、約330億円の売上高を計上していたが、海外水産加工業者との価格競争激化などから業績
が悪化。取扱商品を変更するなど回復策を図ったものの奏功せず、業績低迷が続いていた。
・近年では、東日本大震災により工場が全壊するなどし、財政状態は一段と悪化。不採算子会社の解散や資産売却で事業
を継続してきたが、秋刀魚の記録的不漁に伴う仕入れ価格の高騰や、震災補助金の打ち切りなどを受け、自力での経営再
建を断念し、今回の措置に至った。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
現預金
月商比
(ヵ月)
売上総
利益率
(%)
2017/3  7,678.8  ▲ 508.0 ▲ 604.4 1,824.8 30.3 6.4 6,494.2 0.3 2.4
2016/3 7,683.9 ▲ 254.1 ▲ 361.5 3.0 2.1 10.1 7,098.9 0.4 6.4
2015/3 7,666.8 8.5 ▲ 87.3 25.9 2.2 9.1 6,526.6 0.5 10.1
2014/3 7,154.3 5.6 ▲ 103.6 5.9 1.8 9.5 6,590.5 0.6 9.1
2013/3 6,463.5 ▲ 83.8 ▲ 184.9 28.0 1.9 9.7 5,970.4 0.6 9.8
2012/3 7,372.5 45.9 ▲ 46.4 7.9 1.5 7.6 5,537.1 0.8 10.3
2011/3  7,975.5 ▲ 245.9 ▲ 410.0 ▲ 146.6 1.5 6.0 4,876.6 0.5 7.5
2010/3  8,871.0 ▲ 197.4 ▲ 304.2 ▲ 364.6 3.4 7.5 6,516.3 1.1 9.0
2009/3 9,573.5 31.9 23.1 301.0 9.0 6.6 6,492.1 0.9 11.7
2008/3 10,015.5 ▲ 145.3 ▲ 108.7 26.5 3.9 6.7 7,311.3 1.1 10.5

コメント

・2008/3期から2013/3期にかけて、大幅な減収基調で推移し、長期にわたって経常赤字が続いていた。

・2017/3期は、固定資産の売却益によって、多額の最終黒字を計上しているものの、売却代金を借入金の返
済に充当していたことで、現預金の蓄積にはつながらず、厳しい資金繰りが続いていた。

3.データの分析

・本ケースを分析する財務指標として「売上総利益率」と「現預金月商比」に着目した。

・海外水産加工業者との価格競争激化により、利益率が低下し、売上高総利益率は業界平均を2~3ポイント下回る10%内
外で推移していた。十分な収益が確保できない中、直近では記録的な不漁によって仕入価格が急騰したことで、2017/3期の
売上高総利益率は2.4%まで低下し、大幅な営業利益段階での赤字に陥っている。

・水産物卸売業は、回収サイトよりも支払サイトが短く、事業の運営には相応の資金を必要とする業界である。当社の現預金水
準が長期にわたって低位で推移していることからも、資金繰りの厳しさがうかがえよう。

・下表は、各データの倒産倍率を集計したものである。この結果からも、当該指標が倒産分析に有効であるといえよう。

○卸売業における売上総利益率(集計期間:2017/4~2018/3)...2017/3期 2.4%
売上総利益率全体0%以下0~5%5~10%10%以上
倒産倍率 1倍 3.38倍 1.45倍 1.15倍 0.95倍
○卸売業における現預金月商比(集計期間:2017/4~2018/3)・・・2017/3期 0.3ヵ月
現預金月商比全体0.6ヵ月未満 0.6~1.0ヵ月1.0~2.0ヵ月 2.0ヵ月以上
倒産倍率 1倍 1.64倍 0.92倍 0.55倍 0.66倍

4.総評

・本件は、競争激化により業績が悪化する中、仕入価格高騰によって利益が確保できず、資金繰りが限界に達し、倒産に
至ったケースである。

・食料品卸売業、特に水産物卸売業は、消費期限管理などのコスト負担により、卸売業の中でも利益率が低い業種である。
利益を確保するためには、固定費を賄う一定以上の売上高を確保することが必要となるが、競争激化によって売上高が落ち
込み、採算割れの状態が続いていた。

・本ケースは、売上高が減少し、経常利益段階での赤字が続いていたことから、倒産の予兆を把握することは容易であり、さら
に業界特性を考慮することで、倒産の危険性をいち早く察知することが可能であったといえよう。

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