月次倒産分析レポート

【倒産分析レポート】㈱イトウ

2020年1月31日更新

1.会社概要、倒産経緯

・1972年設立の総合建設工事業者。地元の長野県安曇野市に営業基盤を形成し、公共工事を中心に土木・建築工事を手掛けていた。
・1998/9期にはピークとなる約31億円の売上高を計上していたが、その後、公共工事の減少から業績が低迷。近年は、民間工事の受注拡大や不動産業、福祉事業参入など事業多角化により、業績回復を図っていた。
・かかる中、2009/5期に代表者が急逝し、管理体制が瓦解。直近10年間は、貸倒れの発生や会計処理の不備が多発し、財政実態は不安定な状態にあった。2020/5期に入り、再度の貸倒れが発生すると、資金繰りが限界に達し、今回の措置となった。

2.決算データ

決算期売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
当期利益
(百万円)
配当自己資本
比率(%)
借入
月商比
(ヵ月)
総資産
(百万円)
売掛債権
回転期間
(ヵ月)
実質自己
資本比率
(%)

2019/5

1,912.9 39.4 12.4 11.7 13.4 5.3 3,793.8 13.6 ▲ 158.1
2018/5 1,598.2 21.3 6.4 6.2 34.0 5.0 1,456.1 6.5  ▲ 134.6
2017/5 1,609.3 20.8 8.7 0.2 29.4 4.7 1,667.3 1.6 ▲ 21.1
2016/5 1,135.9 ▲ 70.5 ▲ 75.7 ▲ 76.5 29.3 6.8 1,671.2 1.5 ▲ 5.3
2015/5 1,447.8 9.7 10.2 ▲ 12.8 41.5 4.6 1,362.5 1.4 14.2
2014/5 1,341.5 30.3 20.3 11.6 36.9 5.3 1,578.8 3.0 14.5
2013/5 1,414.8 32.9 19.5 ▲ 20.0 40.6 4.3 1,408.2 2.3 3.6
2012/5 1,091.8 45.1 30.9 ▲ 2.5 36.7 7.8 1,613.6 2.4 6.1
2011/5 1,470.4 39.3 34.2 ▲ 310.5 37.4 4.3 1,586.3 1.5 12.9
2010/5 1,791.3 6.9 14.3 7.6 40.6 5.7 2,226.6 2.2 17.9

コメント

・2012/5期以降は、民間工事受注や他事業参入により、増収基調にあったが、貸倒損失等により赤字が散発していた。
・近年は、完成工事未収入金や貸付金が固定化しており、当該勘定科目の資産性を考慮すると、実質的には債務超過であった可能性が高い。

3.データの分析

・本ケースを分析する指標として、「売掛債権回転期間」と「実質自己資本比率」に着目した。
・売掛債権回転期間は、2019/5期には13.6ヵ月と、総合工事業平均の1.2ヵ月を大幅に超過していた。大型案件着手による売掛債権を未払金や前受金などでまかなっていたことから、資金繰りに大きな負担がかかっていた中での貸倒れ発生が資金繰り破綻に直結したものと考えられる。
・また、実質自己資本比率は債務超過であった。完成工事未収入金のほか、貸付金などの回収可能性に懸念のある資産を多額に計上しており、実質的な財政状態は脆弱であったと思料される。
・下表は、各データの倒産倍率を集計したものである。この結果からも、当該指標が倒産分析に有効であると言えよう。

○総合工事業における売掛債権回転期間(集計期間:2018/4~2019/3)...2019/5期 13.6ヵ月
売掛債権回転期間全体3ヵ月未満3ヵ月~6ヵ月未満 6ヵ月~9ヵ月未満9ヵ月以上
倒産倍率

1.00倍

0.96倍 1.32倍 1.99倍 2.60倍
○総合工事業における実質自己資本比率(集計期間:2018/4~2019/3)...2019/5期 ▲158.1%
実質自己資本比率全体30%以上10%~30%未満0%~10%未満債務超過
倒産倍率

1.00倍

0.67倍 0.57倍 0.95倍 1.79倍

※ 実質自己資本比率とは、資産のうち不良性の恐れのある金額を自己資本から控除した上で算出した自己資本比率

4.総評

・資金繰りが厳しい中、貸倒れ発生により、資金繰りが限界に達し、倒産に至ったケースである。
・当社は、公共工事減少に伴う業績悪化を挽回すべく、他事業に積極参入する中で、代表者が急逝。その後、代表者交代し、
業態維持を図るも、管理体制が整わず、貸倒れを散発していた。近年は、大型案件に着手した結果、仕入原価も急増し、年商
以上の未払金・売掛債権を計上していたことから、資金繰りは厳しい状態にあったと思料される。
・本件は、資産の回収可能性の観点から、財政実態を正確に把握することで、倒産の兆候を把握することが可能であったと言
えよう。

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